はなケア 用賀ケアセンター|株式会社はなケア 世田谷区 訪問介護 居宅介護支援

介護に対する思いIntroduction

数ある中から私たちのホームページに訪れていただきましたことを、本当に嬉しく思います。
心より、御礼申し上げます。

さて、唐突ですが、少しだけ私のお話にお付き合い下さい。
随分、格好悪い部分もありますが、私たちのありのままを知って頂きたいので、包み隠さず、お話しさせていただきます。介護に対する私たちの姿勢もご理解いただけると思いますので、どうか少しだけお付き合いください。

株式会社はなケア 代表取締役
松田 大策

代表取締役 松田 大策

大切なご家族様をお任せいただける安心を
私たちはなケアが提供いたします。

当社にとって初めてのご利用者様

2010年1月5日、はなケアが事業をスタートし2日目で当社にとって初めてのサービス依頼が参りました。内心「サービスの依頼が全く来なかったらどうしよう..」という不安もないわけではありませんでしたので「お仕事をいただけた!」飛び上がるくらい嬉しい気持ちでした。

認知症の進行と閉ざされた心

ご担当のケアマネさんによると、利用者様は87歳の少々大柄な男性で認知症を患っていらっしゃる方の入浴サービスとのこと。脚力も弱っているため転倒のリスクも考え女性よりも男性の方がいいだろうとのことで、当事業所で唯一の男性である私がサービスを担当することになりました。

ケアマネさんより詳細な情報をお聞きすると、ご利用者様は当事業所から徒歩10分程度の地域にお住まいの田中敬三(仮名)さん。苦学の末、経済学の博士号を取得長く母校である有名私立大学の教授としてご活躍され、最終的に学長までお努めになった方とのこと。ご経歴をお伺いし、少々身構える部分もありましたが「当社にとって初めてのお客様、しっかりとご満足いただけるようにがんばろう。」明後日からサービスに入ることになりました。「あ、松田さん、田中さんが入浴を拒否したらあまり無理をせずに..」とケアマネさん、「拒否?大丈夫かな..」と思いながらもサービス開始に向けて準備を整えていました。

そしてサービス当日、お宅を訪問しました。息子様の奥様に出迎えられ、リビングに進むと田中さんがソファに座っていらっしゃいました。

私:「はじめまして、松田と申します。宜しくお願いいたします!」
田中さん:「君は誰だ?」

と、随分強い口調。

私:「田中さんのお風呂をお手伝いに参りました」
田中さん:「風呂?私は風呂には入らん!」
私:「そうおっしゃらずに、お風呂でさっぱりしましょう」
田中さん:「入らんといったら入らん!帰りなさい!」


田中さんの目は吊り上がり、顔も真っ赤。声は外まで聞こえてしまうような大きな怒鳴り声でした。
息子さんの奥様もこうなったらどうしようもないので帰ってほしいとのこと。
結果、サービスはキャンセルとなり事業所へ戻りました。

事業所に戻り、今日のことをケアマネさんに報告すると「やっぱり..」との一言。
どういうことか訊ねると田中さんは以前から、訊ねて来るヘルパーに対してやはりものすごい形相で怒鳴り散らしサービスをかたくなに拒否し続け、そのため各事業所が次々とサービスをお断りしてしまい、実はサービスの依頼を受けるのは当社で6社目とのこと。

どうやら田中さんはご自身が認知症を患い、進行しているという自覚もあり、そのことからいつも機嫌が悪く他人を受け入れなくなっており、ご家族にすら心を閉ざすようになってしまったようです。前の5社は結局入浴サービスが実施できずに終わり1年半ほどの期間にわたり入浴されていないとのことでした。

次の訪問は3日後。入浴を無理に勧めても受け入れて頂けない、とにかくまずは田中さんとの関係をどう構築するか?その糸口を探ることにしました。

そして3日後2回目の訪問。
私:「こんにちは田中さん、松田です。宜しくお願いいたします」
田中さん:「何をしにきた?」
私:「田中さんのお手伝いをしに参りました。」
田中さん:「手伝いをしてもらうことなどない!今、本を読んでいるんだ!さっさと帰ってくれ!」

やはりこの日も強い拒否でキャンセル。「やっぱりだめか」正直落ち込みました。

この後の3回目の訪問も拒否をされ、4回目、更に5回目も強い拒否でサービスが実施できずに終わりました。
このように拒否ばかりでは確かにサービスをお断りしてもご家族様やケアマネさんから文句は言われないでしょうし私も内心「何度試みてもダメなのではないか?」諦めたくなる状況でもありました。
しかし、田中様は当社にとって初めてのお客様、「何もできずに終わりたくない!」そのような気持ちで次回6回目に備えることにしました。

徐々に見えてきた糸口

今日で6回目の訪問。
私:「こんにちは田中さん、松田です。」
田中さん:「また君か。」
私:「風呂には入らんよ。しかし、君、何回目かは忘れたが懲りずに来るね。」

そうおっしゃる田中さんの表情はいつも違いどことなく柔らかく、笑顔まではいきませんが目じりが少し下がったように見えました。
私:「わかりました、お風呂とは言いません。蒸しタオルで少しだけお体を拭かせて下さい。」
田中さん:「蒸しタオル?少しなら..」

蒸しタオルで手、腕、肩、背中と拭き進むうち、田中さんの表情が更に柔らかくなってゆきました。そしてとうとう上半身全体を清拭することができました。

私:「どうでした?気持ちよかったですか?」
田中さん:「うん。」

小さく頷かれ、かすかな笑顔になっていました。

訪問を重ねるうちに私の顔が記憶に残り、多少受け入れられるようになってきたのでしょう次回以降の訪問では清拭に関しては全く拒否をされることはなくなりました。

田中さんは蒸しタオルで全身を清拭している間、故郷での子供時代わんぱくに野山を駆け回って遊んだこと、戦争の苦しい思い出、苦労して勉強したこと、数年前に亡くなった奥様との思い出などお話し下さいました。この数年は他人どころかご家族にも心を開かなかった田中さんから「君はいつも一所懸命だね」とニコニコとした笑顔までみられるようになってきました。

そして、1年半ぶりの入浴と更なる意欲

週2回の清拭を3カ月ほど続けていたある日、いつものように私が訊ねると
「おお、君か。今日は気分がいいから私は風呂に入るぞ!」

なんとその日は自らお風呂に向かい、実に1年半ぶりの入浴が実現しました。私が頭を洗い、背中を流しました。
「ああ、ほんとうに気持ちがいい、ありがとう。」
と、田中さんは実にご機嫌。その日以降、私が訪問するとご自身から入浴されるようになりました。

認知症のいくつかの特徴の中で「攻撃的になる」「心を閉ざす」というものがありますが、田中さんは特にこの2つが顕著であったと思います。そのような状況の中、当初の私を含め、以前サービスに入った多くのヘルパーはお風呂に入って欲しいという思いばかりが先行し、「行動」にばかり目を向けてしまっていた。結果、その思いを押し付けることになってしまい田中さんをかたくなにしてしまったのだと思います。このとき改めて利用者様の「心に寄り添い向き合う」ことの重要性を胸に深く刻みました。

サービスを開始してから1年が経とうとしていたある日、
いつものように入浴していただき、背中を流していると田中さんが
「母校はいまどうなっているかな?」
「何年かぶりに大学に行きたいな」

とおっしゃいました。

2年ほどお宅から1歩も出たがらなかった田中さんから出た言葉に正直驚きました。入浴によって体がきれいになり、また適度な刺激ともなり新たな意欲が出てきたのだろうと思います。ご家族様からもタクシーで学校の前を通るだけでも構わないからお願いしたいとのことで、自費サービス(介護保険ではなく)ということで対応することになりました。

後日、自宅からご自身が学長を務められていた大学へタクシーで向かいました。
片道40分ほど走り大学の前を通りかかると
「学校に来たのは何年ぶりかな~」

「この正門の横には桜の木があって春は本当にきれいだったんだよ。」

などとおっしゃり、外の景色を眺めているその目には涙が浮かんでいました。

大学の周りを2回、20分ほど回り、ご自宅へ向かいましたが、
帰りのタクシーの中では「来れてよかった。」何度も何度も「ありがとう」と涙を流されていました。

そして、田中さんとの別れ

それから数か月後の寒い時期、風邪を引いたとのことでサービスのキャンセルが続きました。
その後、風邪をこじらせ高熱で入院。その約2週間後、肺炎を患い帰らぬ人となってしまいました。

長々とお話ししてしまい大変申し訳ありませんでした。 私はお固いありきたりの代表挨拶ではなく、私が創業当初に経験したこのことをどうしても皆様にメッセージとしてお伝えしたいと考えました。なぜならこの経験を通して得た気付きこそが私たちの考え方の基本となっているからです。

利用者様一人ひとりの「心」に寄り添い、共感し、その共感から安心や信頼が生まれる。これこそが私たちが考える介護の出発点であり、私たちの事業所の根幹を貫く価値観です。

私たちは「信頼」「安心」の関係を土台とし、一人ひとりの利用者様が、命の灯が消える最期の時までその方らしく笑顔で暮らせるようにサポートさせていただきたい-
それが私たちはなケアスタッフ全員の想いであり、存在意義であると思っています。 まだまだ未熟な部分も多い私たちですが、これからも少しでも皆様のお役に立てるよう頑張って参ります。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

株式会社はなケア 代表取締役

松田 大策